構成文化財-麒麟獅子-

風の季節での無事と感謝を胸に舞われる「麒麟獅子舞」

麒麟獅子舞は霊獣・麒麟をかたどった獅子頭を被り、蚊帳と呼ばれる胴幕に大人二人が入って舞う二人立ちの獅子舞で、多くは一頭で地を這うようにゆっくり頭を回したり、ひねったり、伸び上がるような動作が特徴的。
麒麟獅子舞の頭は面長で、額に角、直立した耳を持ち、ねむり獅子の異名があるようにまなこを閉じており、鼻の穴は天上に大きく開き、どことなくユーモラスな表情となっている。
また、獅子舞には天狗などの獅子のあやし役がつくが、麒麟獅子舞は、赤い面・衣装・髪の「猩々」がつくのが特徴で、長さ1.5mほどの赤い棒を持ち、麒麟獅子を先導したり、緩やかな動きで舞ったりする。

構成文化財-麒麟獅子-

370年受け継がれてきた麒麟獅子舞

この地では一角をもつ黄金の頭に緋色の衣装を纏った「麒麟獅子舞」が、約180の村々に継承され、舞われている。
麒麟は他の生き物を傷つけない泰平の世の象徴とされた中国に伝わる霊獣で、約370年前に初代鳥取藩主・池田光仲が偉大な曾祖父・徳川家康を祀るために創建した神社の祭礼で、麒麟の顔を持つ獅子舞として初めて姿を現した。きらびやかなその姿を見た人々は、幸せを呼ぶ存在として、自分たちの村の祭りにも取り入れたいと強く願った。麒麟獅子はその顔や舞の作法など、村ごとに異なる個性と形態を生みながら、この地に広がり受け継がれていった。


風と共に生きる人々の知恵と歴史
風は砂・波・雪の賜物を人々に与えた一方で、飛砂や荒波、豪雪などの厳しい自然に対峙する暮らしを人々に課してきた。これから迎える厳しい風の季節での無事とそれを乗り越えた感謝を胸に、人々は古来より幸せを呼ぶ麒麟獅子を舞い続け、麒麟に出会う旅人にも幸せを分け与えている。
因幡・但馬は、日本海から吹きつける風と人の共生の地であり、麒麟獅子を心のよりどころに、砂・波・雪の厳しい自然を受け入れ、風とともに生きる人々の知恵と逞しく生き抜いてきた歴史が息づいている。

因幡の麒麟獅子舞


霊獣・麒麟の顔を持つ獅子舞で、初代鳥取藩主が創建した東照宮の祭礼に初めて姿を現した。
幸せを呼ぶ存在として、因幡地方の村々に受け継がれている。緩やかな舞や囃子を特徴とする。

厳しい風の季節での無事とそれを乗り越えた感謝を胸に舞われ、この地で出会う旅人にも幸せを分け与えている。 

鳥取市の麒麟獅子
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麒麟獅子舞が誕生したきっかけになった、鳥取東照宮のあるまさに「麒麟のまち」の中心部に位置する鳥取市 。圏域でも一番多く保存会があり、それぞれの舞を守っている。
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岩美町の麒麟獅子
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日本海沿岸の絶景が続く山陰海岸ジオパーク。
洞窟や洞門、白浜など多彩な海の風景が広がる岩美町にも、麒麟獅子の文化が脈々と受け継がれている。
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若桜町の麒麟獅子
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鳥取県最東端に位置し、多くの森林に囲まれた若桜町。
春は桜が咲き誇り、冬は深々と雪が降る自然豊かな町には3千人が暮らしている。
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智頭町の麒麟獅子
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鳥取県東南部にあり、林業が盛んな智頭町。
この町の芦津集落には約80世帯が住む。現在9人で構成する芦津獅子舞保存会の事務局長、寺谷紀明さんは「昔はもう少し人が多かったんだけど、若い人が県外に出たりでなかなかギリギリの人数」。時代の波に直面しながら、今も伝統を守っている。
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八頭町の麒麟獅子
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農業が盛んで田園風景が美しい八頭町。
才代集落で澤神社麒麟獅子舞保存会約25人が活動を続けている。「2年前に高齢化で潰れそうになったが、なんとか持ちこたえて今があります。」と田中浩実会長。1998年には、八頭町で唯一、県無形民俗文化財に指定されている。
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但馬の麒麟獅子舞

東照宮の祭礼に登場した麒麟獅子舞が、但馬地方の香美町、新温泉町にも広がり、幸せを呼ぶ存在として受け継がれている。

軽快な舞や囃子を特徴とし、因幡地方とは違った伝承が見られる。
厳しい風の季節での無事とそれを乗り越えた感謝を胸に舞われ、この地で出会う旅人にも幸せを分け与えている。 

香美町の麒麟獅子
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定置網漁が盛んな小さな漁師町、香美町香住区鎧。
日本海に面した高低差のある集落に約50世帯が軒を連ねる。鳥取県東部の岩美町から伝承されたと言われる鎧の麒麟獅子は、明治45年に余部鉄橋の完成を記念して披露されたのが最初だという。藤原政信会長は「日本遺産でいろんな人が来てくださり、コミュニケーションを図れるのは嬉しい」と、地元の文化を誇らしげに語る。
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新温泉町の麒麟獅子
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旧浜坂町と旧温泉町が合併した新温泉町。
その中で、約400世帯が住む諸寄(もろよせ)では、為世永(いよなが)神社の夏祭り(7 月14、15日)で麒麟獅子が舞う。「この地域はお年寄りから子どもたちまで、本当にみんなが獅子が好き。やっぱりこれがないと祭りらしくない」と話すのは保存会の田中美嗣会長。多世代が一緒になり、伝統を受け継いでいる。
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